【虎太郎】
「いいからじっとしてろ。心配するな、車の一台や二台どうってこたぁない」

 車の加速は止まらない。
 アレは途中で停止しようなどとは考えていない。

 アスファルトを擦るタイヤの音は甲高く、まるで少女の悲鳴のようだ。

 殺意。

 そう――殺意がある。あの車には紛れもない殺意がある。

【虎太郎】

 やたらいてん
「八咫雷天流――――――」

 加藤教諭が拳を構えていた。

 その様はまさに威風堂々。これから襲いかかる車、即ち死への恐怖など微塵も感じてはおらず。

 車はさらに加速する。

 一瞬一瞬がまるで写真のように切り取られていく。
 背後のすずが身を強張らせる。

【虎太郎】
 くだき
「砕鬼――――!」