光の世界の理(ことわり)を断裂させ、
闇の世界の理(ことわり)を招き入れる。
口笛のように悲しく、甲高い音が響く。
黒き禍を運ぶ、魔王の口笛だ。
【リック】
「あ、ぐっ……!」
裂けた頬から黒色の血が噴いた。
黒に染まっていくたびに、心臓を鷲掴みにされたような恐怖があり、それ以上に
染まることへの歓喜がある。
血の中に麻薬が混ざったようだ。
今、この場に立っていることが快楽となり、今こうして銃を握っていることが悦楽となる。
――だが、私はこれに恐怖を感じなければならない。この狂気の悦びへの恐怖を。
頭の中で、言葉を繰り返す。
――使命を果たせ。使命を果たせ。使命を果たせ。命令を忠実に遂行しろ。
使命とは、使命とは――。
……主を救う、主の命を守る。それだけだ。