【リック】
「電話でクレムリン様を呼びます。表向きは、あくまで警察との連携作戦が成功した――との事でよろしいでしょうか?」
肩を竦めて、お嬢様は言った。
【セルマ】
「……ま、ここで警察の面目を丸つぶれにさせてもいい事ないでしょうしね」
ニヤリとした笑みを浮かべる――が、ピート氏から訝しげな視線を送られていることに気付き、お嬢様は慌てて対外向けの穏やかな微笑を形作った。
【リック】
「……」
私が思わず笑いを堪えていると、すっとお嬢様は私の傍に近寄り――。
【セルマ】
「あら、何かおかしい?」
などと言いつつ、足をぐりぐりと踏んづけた。
【リック】
「いいえ、まったくなにも問題ございませんよ……お嬢様」
【セルマ】
「そう。それならいいのよ」
お嬢様はそう言ってからもう一度、私だけにしか見えない角度でニヤリと笑った――。